第17章 メガネの向こう側
「ふ~ん。翔ちゃんって、頭デッカチの優等生かと思ったのに、そうでもないんだ」
「櫻井先生な?俺は頭デッカチの優等生だよ」
「そんなことないよね?
生徒の気持ち、尊重してくれてんじゃないの?」
「それは教師とか生徒とか関係ないだろ…
人と人なんだから、誰であろうと尊重するよ」
「なんか、翔ちゃんのイメージ変わったかも。
昨日智のこと怒ったときは、超冷徹だと思ったのに」
「ニノ、あれは俺が悪かったんだって、昨日も言っただろ?」
ふたりの会話を聞きながら描き進めていたが、昨日の話題になり鉛筆を持つ手を止めた。
「確かに智が悪いよ?でもさ、あんなキツい言い方しなくてもよくない?」
ニノがそう言うと、ずっと外を見ていた櫻井が俺の方を向いた。
「大野は俺の言ったことどう思った?」
「俺は先生の言ってること間違ってないと思った…
クラスの半数以上の奴が必死に勉強してるのに、俺が空気を乱すようなことをしちゃって悪かったなって…」
「大野ならわかってくれると思ったよ」
笑顔を見せてる訳じゃない。でも櫻井のレンズの奥の瞳が優しく見えた。
「俺なら?」
「大野だけって訳じゃないけど、本気で目指してる物がある奴は、本気で目指してる物がある奴を応援できる筈だから…
目指すものは違くても、真剣に目標を達成しようとしてる奴の邪魔なんてする訳がない…
あいつらは、今それこそ寝る間も惜しんで勉強してるんだ…そんな奴らの前で居眠りするなんて、あいつらをイライラさせるだけだろ?
只でさえ疲れてるのに、そんなストレスを与えたくないんだ」