第17章 メガネの向こう側
「なに智…櫻井センセのことモデルに決めたの?」
「ん、ちょっと描いてみたくなった」
「だろ?翔ちゃん綺麗な顔立ちしてるからつい描きたくなるんだよなぁ」
「相葉ちゃん、櫻井センセのこと前にも描いたことあるの?」
「うん、高校の美術の授業で描かせて貰った…向かい合ってお互いの事描きあったんだけど翔ちゃん超下手くそでさ、ふたりして爆笑しちゃったよ」
「爆笑?あの櫻井先生が?」
櫻井の笑う顔なんて見たことない…しかも爆笑って。
「想像出来ないんですけど~」
ニノがそう言うと相葉ちゃんは少し悲しそうに顔を歪めた。
「だよな…今の翔ちゃんからは想像出来ないだろうけど、2年前まではいつも幸せそうに笑っていたんだよ」
「さっきも言ってたね、2年前って…2年前何があったの?」
「…2年前に恋人を事故で無くしたんだよ…大学卒業して直ぐに交通事故で…ほんとにお似合いのふたりでさ、凄く翔ちゃんのこと愛してて…あの眼鏡も実はその恋人が『悪い虫が付かないように』って掛けさせたんだ」
「そうだったんだ…」
さすがのニノもあまりの話の内容に返す言葉もなかったようだった。俺にいたっては一言も発することが出来なかった…22才の若さで愛する人を失うって俺には想像も出来ないくらいショックな出来事なんだろうな…常に笑顔でいた人間がニコリともしなくなるんだから。
「忘れろとは言わないけどさ、もう新たな人生始めていいと思うんだよ…まだ若いんだから…ってまぁ、お前たちの方が全然若いんだけどな?」
相葉ちゃんが俺たちに向かって笑顔を見せる。
「俺がこの話したの翔ちゃんには内緒な?」
「じゃあ、口止め料頂戴?」
ニノが笑顔でそう言うと
「お前はまたぁ」
って相葉ちゃんがニノの頭をくしゃくしゃっと撫でた。
「やめろよぉ」
そう言ってはいるけど、ニノ嬉しそうだな。