第17章 メガネの向こう側
「今日は災難だったね智…よりによって氷の女王の授業で寝ちゃうんだもん、あれは駄目だわぁ」
放課後、美術室でスケッチブックと向かい合ってる俺の横にはスマホ片手にゲームをしているニノがいた。
「氷の女王?なんだそれ?」
「あれ?知らないの?櫻井の事だよ」
「知らない…誰がそんなこと言ってんの?」
「みんな影ではそう呼んでるよ?肌は透き通るように白いし、ニコリとも笑わないだろ?おまけにあの銀縁眼鏡が冷たさを増長させるよなぁ…レンズが氷でできてるんじゃないかって話だよ」
「レンズが氷って…そんなことあるわけないじゃん」
俺が呆れ気味に言うとニノも呆れたように言い返す。
「当たり前だろ?みんな嫌味で言ってるだけだよ」
「でもさ、今日のは俺が悪かったから怒られても当然だよ…」
大学が決まって浮かれてるつもりはない…でも、もうすぐ本格的に受験が始まる連中がクラスの中には沢山いて、そいつらは居眠りなんかする余裕は全くないんだ。
櫻井の言う通り俺の緩んだ行動が周りの奴らに不快な思いをさせてしまう。
「確かにね…必死に勉強してる奴らにとっては面白くないだろうね」
「うん…だから俺が悪い…」
「ま、智がそう反省してるなら今後気を付けなよ…また寝そうになったら早めに起こしてやるからさ」
ニノがニコッと笑い俺の肩をポンと叩いた。
「おう、サンキュ…」