第16章 sincerely
翔が用意してくれた食事を食べ、翔が片付けをしている間に風呂を借りた。風呂から出てリビングに戻ると翔はソファーから立ち上がり俺の元へ駆け寄る。
「智さん、髪濡れてますよ?ちゃんと乾かさないと風邪ひいちゃう」
俺の肩に掛かったタオルを手に取ると優しく髪を拭いてくれた。
「悪いな」
「いいえ…あ、智さんビール飲みます?」
「ん、貰おうかな」
「はい、持ってきますね…座っててください」
俺の為にあれやこれやと動く翔…ヤバいなぁ今日はおとなしく帰らなきゃいけないのに甲斐甲斐しく世話をやく姿が可愛くて今すぐにでも抱きしめたい。
そんな気持ちをなんとか押さえ間もなく12時を迎えようとしたとき、ポケットから懐中時計を取り出した。
「智さん、時計持ってきてたんですか?家にもあるのに」
「だって一緒に時を刻むんだろ?だったらふたりの大切な時間を過ごすときはこの時計も一緒じゃなきゃな?ほら、もうすぐ25日だよ」
時計の針が12時を指した瞬間
「おめでとう、翔」
と伝えたら、翔が俺に抱きついてきた。
「翔?」
「智さん、ありがとうございます…誕生日一緒に迎えるの諦めようとしてたけど、よかった智さんが来てくれて…俺、今すごく幸せです」
「うん…俺も、すっげぇ幸せ…」
相葉から話聞いて良かった…もし今日ここに来なかったら翔に寂しい誕生日を迎えさせるところだった。またあいつに助けられたな。
少し体を離し翔と見つめあうとどちらともなく近づいていくふたりの唇…何度も舌を絡ませキスをすると翔の吐息が甘さを含む。これ以上続けたら不味いな…名残惜しくも翔から離れた。
「今日はもう帰るな…」
そう伝えると翔が寂しそうに俺を見るからその頬に触れチュッとキスをした。
「そんな顔するなよ…」
「泊まっていくのも駄目ですか?」
「一緒に寝たらエッチしたくなっちゃうだろ?」
真っ赤に顔を染める翔…本当なら今すぐにでも押し倒したい…でも今日ばかりはそうはいかないんだ。翔の可愛い願い事は叶えてやりたいが、一仕事残ってる俺は後ろ髪引かれる思いで翔の部屋を後にした。