第16章 sincerely
「翔、12時になるまで一緒に居ていい?」
「俺は大丈夫ですけど、智さん疲れてませんか?せっかく今日は早く帰ってきたんだから早く休んだ方がいいんじゃ…」
「12時になったら帰るから…誕生日を迎える瞬間一緒にいよう?」
「いいんですか?明日も仕事なのに」
「大丈夫だよ、エッチは出来ないけど」
「しなくても智さんとこうして居られれば十分です」
頬を紅く染める翔を見てほんとはめちゃめちゃ抱きたくなったけど、帰ってから絵を仕上げなくちゃいけないし、明日のこともあるから今日は我慢しないとな。
「智さん、ご飯食べました?」
腕の中に居る翔に尋ねられまだ夕飯を食べてないことを思い出した。
「いや、まだ食ってない」
「すぐ用意しますね、ちょっと待っててください」
俺から離れキッチンへ向かう翔の後を付いて行った。
「何かあるの?」
「はい、智さんの帰りが遅くなってからいつ智さんが家に来てもご飯出せるように準備してました」
「毎日?」
「毎日用意というよりもいつでも出せるように冷凍してストックしてました…」
きっと一所懸命料理したんだろうな、俺が食べるかどうかもわからないのに…そんな健気な姿が愛しくて冷蔵庫のドアに手を掛けた翔を後ろから抱きしめた。
「智さん?」
「お前、可愛すぎ…」
抱きしめる腕に力を込め肩に顎を乗せると耳元で囁いた。
「えっ?えっ?なにっ?」
慌てふためく翔の姿がまた可愛らしい…腕の中の翔をクルリと向きを変え正面に抱きしめ直す。
「ほんとは抱きたいけど今日はこれだけで我慢する」
両手で翔の頬を挟み、そっと唇を重ねた。