第16章 sincerely
マンションに帰ると部屋に絵を置きルームウェアに着替えてから翔の部屋に向かった。インターフォンを鳴らすと翔の声が聞こえてきた。
『はい…』
「翔、俺…」
そう言うと玄関ドアの向こうからドタドタと走る音が聞こえてきた。ガチャと鍵が解錠されると同時にドアが勢いよく開いた。
「智さん…今日は早かったんですね…」
翔の安心したような声と表情でどれだけ心配掛けてしまっていたのかがわかった。
「ごめんな、相葉に聞いたよ…心配してくれてたみたいだな」
「だって俺には心配することしか出来ないから…智さんが倒れたらどうしようとか思っても何もしてあげられない…それが悔しくて」
翔の為に頑張ってたのに知らない内に翔を苦しめてた…
ほんと俺ってまだまだだな…自分のやりたいことに必死すぎて肝心の翔のことを見てやれてなかった。相葉に言われなかったら今日だって翔の部屋を訪れなかったかも知れない。絵の仕上げもまだ残ってるし。
「ほんとごめん、ちょっと時間が掛かっちゃって…でももうほぼ片付いたから」
「ほんとですか?」
「ほんとほんと、明日の翔の誕生日は家でお祝いしような?」
「お祝いなんていいです…それよりも智さん、ゆっくり休んでください」
「そんなこと出来るわけないだろ?俺はお前の誕生日をふたりで過ごしたいの、その為に頑張って終わしたんだから俺の努力無駄にするなよ」
「俺の為に無理したんですか?」
翔の顔が少し曇った。
「違うよ、俺の為…俺が翔と一緒にお前の生まれた日を過ごしたいの」
「智さん!」
翔が抱きついてきたのを両腕で抱き止めた。
「嬉しい…智さん忙しいから駄目かなって思ってて…ほんとは一緒にいたいけどそんな我儘言ったら智さん困らせるって…」
「ごめんな…ちゃんと言っておけば良かったんだよな、一緒に誕生日のお祝いしよう、って…俺の時はちゃんと言ってくれてたのに」
「いいえ、いいんですそんなこと…明日一緒に居られるってわかっただけで嬉しい」