第16章 sincerely
その後も土日も含めニノの家に通い詰めてなんとか誕生日の2日前に塗り終えた。まだ仕上げが残ってるけどそれは最初から家に絵を持ち帰ってからにしようと決めてた。だから今日は乾かしておいた絵をニノの家に取りに寄らせてもらっただけ。
「大野さん、最近翔ちゃんと話してます?」
ニノの家から帰ろうとした時玄関まで見送りに来た相葉に問いかけられた。
「ん~、ここんとこ余り話せてない…会社でも営業出ちゃうと中々な…」
「翔ちゃん心配してましたよ?土日も休み無しだし毎日帰りが遅いって…下の階だから大野さんが部屋に帰ってきたのわかるらしくて、でもちゃんと話す時間もないって」
「朝の通勤時間位しか一緒に居れてないからな…わかったよ、帰ったら翔の部屋行ってみる」
「そうしてあげてください、心配してる翔ちゃん見てて思わず抱きしめるところでしたよ」
「お前なぁ…」
呆れたように相葉の顔を見るとふふっ、と笑った後少し真顔になって
「やだなぁ、冗談ですよ…でもそれくらい寂しそうに見えました」
「うん、ごめん…サンキュ」
そうだよな、相葉の言ってることは正しい…本来なら俺が気付くべきことなんだ。
「いいえ、大野さんの為じゃなく翔ちゃんの為ですから…明日でしょ?誕生日…寂しい思いさせたくないんで」
「ほんとにお前あんまり翔のこと気にしてるとニノに疑われるぞ?」
「大丈夫です、それ以上に和さんに尽くしてますから」
ニコッと余裕の笑みを漏らす相葉。ニノ、ほんとにいいヤツ捕まえたな…年下なのに器のデカさ感じるよ。でも俺が翔を想う気持ちは相葉がニノを想う気持ちに負けてないから。
ごめんな、翔…俺の都合で寂しい思いさせて…俺は急ぎ足で帰路についた。