第16章 sincerely
翔が楽しみにしていたジンベイザメを見学し、やはり子供のようにはしゃいでいた翔。水槽に張り付くように見入っていた。
水族館の中は照明が暗くしてあり、まるで自分達も海の底にいるのではないかと思わせる演出になっている。
「凄い綺麗ですね、ほんとに海の中にいるみたい…」
翔も同じことを思ったらしい。『ほぉ~』っと息を吐くと水槽の中の魚たちをずっと目で追っていた。
隣に立ち翔の手を握ると、瞬間的に俺を見た…ニコッと笑い掛けると翔もニコッと笑い握り返してきた。
「女装してなくても外で手を繋いでデート出来るなんて思ってもみませんでした」
「やっぱり女装して無い方がいい?」
「智さんとデート出来るならどちらでも…俺は自分の姿見えないですから、どちらかと言えば選ぶのは智さんですよ?どっちがいいですか?今の俺と女装した俺…」
少し不安そうな瞳をした翔…まだ信じきれてない?俺のこと…さっき話したばかりなのにな。
「俺もどっちでもいい…俺が好きになったのは外見じゃなくて中身だから」
信じるとか信じないとかの問題じゃないんだろうな…俺たちが同性同士である以上この先も翔は無意識に不安を感じるんだ、そして考えちゃうんだろ?自分が女だったらって…だったらずっと言い続けてやるよ。
「俺は翔しかいらないし、翔しか好きにならないし、翔しか愛せないし、翔としかキスできないし、翔のことしか抱け…」
「智さん!もういいです!」
慌てたように俺の言葉を遮る翔。
「わかって貰えた?」
「はい…ごめんなさい…」
「謝る必要はないって…翔が不安になった時はいくらでも俺の想いを伝えてやるよ」
そう言ってやると翔は嬉しそうに綺麗な笑顔を見せると
「不安じゃない時も知りたいです…」
小さな声で呟いた。