第2章 jealousy
「すみません、なんで泣いてんだろ俺…」
自分で涙を拭って顔をあげた。
「…俺、なんか変なこと言った?」
俺の顔をじっと見ながら大野さんが聞く
「いいえ、言ってませんよ?
大野さんの話に感動しちゃったのかな…」
大野さんに心配かけたくなくて笑顔で答えた。
本当は感動なんてしてない…
大野さんの話は奇跡だと思う…
16年も前に会った、名も知らない人に再会したなんて…
しかも、知らない内に好きになってたなんて…
凄い話だと思う…でも、それが大野さんのことだと思うと素直に奇跡と認めたくない…
なんでだろう…俺って、こんな嫌な奴だったんだ…
大野さんがずっと俺のことを見てるから、目を逸らした。
俺の気持ちを見透かされそうで怖かった。
だから誤魔化すために話を続けた。
「大野さん、その人とまだ付き合ってないんですよね?」
「うん…まだ気持ち伝えてないし」
「伝えないんですか?」
「まぁ、いずれは伝えたいと思ってるけど、まだ早いかな…」
「…そうですか…」
なにやってんだ俺、こんなこと聞いて…益々気持ちが落ちていってる気がする…
これ以上大野さんと一緒にいるの辛いかも…
ふたりの間に沈黙の時間が流れる…
「あ、そうだ。櫻井、これ」
突然大野さんが声をあげ、手に持っていた袋を俺に渡した。
さっき、侑李くんとスニーカーを買いに行って戻ってきた時に手にしてた物だ。
「なんですかこれ?」
「ん、櫻井にプレゼント」
「俺に?なんで?」
「店見て回ってた時にいいなぁって思って、開けて見てみ?」
包装を開けて出てきたのは薄いピンクを基調としたチェック柄のネクタイ…
「綺麗な色…」
俺の好きな桜の色…
「だろ?櫻井に似合うと思ってプレゼントしたくなった」