第2章 jealousy
「いいんですか?俺が貰って…」
「当たり前だろ、櫻井に似合うと思って櫻井の為に買ったんだから」
そう言って笑う大野さんの顔を見てドキッとした。
なんで?なんで大野さんの笑顔を見ただけでドキドキしてるんだ?
「ありがとうございます…」
大野さんが俺に似合うと思って、俺の為に選んでくれたネクタイ…
嬉しくて顔が綻んでしまう…
さっきまでの落ち込みはなんだったんだろ…単純過ぎるだろ、俺。
「なぁ、櫻井。ネクタイを贈る意味って知ってる?」
ネクタイを贈る意味?
「いいえ。何か特別な意味があるんですか?」
「いや、知らないならいいや
お前、今凄い嬉しそうな顔したから意味分かってんのかなって思っただけだから」
やっぱりなにか特別な意味があるんだ…なんだろ?
「そんな可愛い顔して喜ばれたら、期待しちゃうだろ…」
大野さんが小さな声で何か呟いたけど聞き取れなかった…
「え?なんですか?」
「いやなんでもない…あぁ、ネクタイの意味も気にしなくていいから」
大野さんが顔を赤くして答えるから反って気になるんだけど…
「それよりさ、腹減らね?飯食いに行こう」
急に立ち上がる大野さん…
なんだか慌ててる感じの大野さんを見ていたら可笑しくなった。
「はい、行きましょ」
そう答えたら大野さんが手を差し出してきた…
一瞬躊躇ったけどその手を握り立ち上がった。
「ありがとうございます」
ニコッと笑うと、大野さんもニコッと笑い返してくれた…
手を離し、横に並んで歩き出す…
今日感じたモヤモヤがなんだったのか分からない…
でも、今こうして大野さんの隣に並んで歩いてるだけでさっきまで感じてた憂鬱な気持ちが消え去った。
だから、今はまだ、あの感情がなんなのか、知る必要はないのかもしれない…
End