第16章 sincerely
のんびりと島の中を歩いて過ごしたが、沖縄と言えどまだ1月…日が落ちるのも早いし気温も下がってきた。
「翔、あと1ヵ所行きたいところあるからそこ見たら本土に戻ろ」
「わかりました、でも良いところでしたね…歩いているだけで癒される」
「だな…今度はさこの島のホテルとって浜辺でゆっくり過ごすのもいいな」
「はい、なんか凄い贅沢な時間の使い方」
「たまにはいいだろ?」
「そうですね…」
そんな事を話しながら歩いていると目的の地に着いた。
「翔ここだよ…」
「浜辺?こんな時間なのに結構人がいますね?」
「みんな見たいものがあるんだよ」
「見たいもの?」
「そう、あれ…」
海の方を指差すと翔の視線がそちらに向いた。
「綺麗…夕陽が海に沈んでく」
「うん、それも見たかったんだけど、翔と一緒に見たかったのはあの岩なんだ」
「あの岩?」
「そう、この島って『恋の島』って言われてるんだ…あの岩もハートロックって呼ばれててこの島のシンボル的な物になってる…恋人たちはあの岩を見ながら幸せを願うんだって」
「だから皆さんふたりで来てるんですね」
周りを見渡すと男女のカップルばかり。男同士で来てるのなんて俺たちぐらいだ。
各々が思い思いの過ごし方で過ごしている…夕陽をバックに写真を撮る人、ふたりで手でハートの形を作り岩の方に向けてる人。
「皆さん幸せそうですね…」
翔が嬉しそうに微笑んだ。
「うん、俺たちには負けるけどな」
そう言って指を絡めるように翔の手を握った…翔は一瞬ビクッとしたあと指に力を入れ握り返してきた。
「ふふっ、そうですね…」