第15章 愛のかたまり
ホテルにチェックインし部屋に入ると、翔くんは俺の手を引きソファーに座った。俺の両手を握り優しく語り掛けてくる翔くん。翔くんの顔を見ることが出来なくて俯いたままでいる俺。
「智、何かあった?」
「…さっきの人、朝電話してきた後輩?」
「そうだよ?」
「ふたりでずっと仕事してたの?」
「うん、そうだね」
「…何かなかった?」
「特に?なんで?」
翔くんの自然な声…その声から言ってることに嘘はないってわかった、でも…
「…あの人嬉しそうだった」
「何が?」
「翔くんに頭撫でられて嬉しそうに笑ってた…」
「だから?」
「…だから、って…」
翔くんがはぁ…とため息を吐いた。
「もし、万が一アイツが俺のこと好きだって言ったら智はどうするの?」
「どうするって言われても…」
「俺と別れる?俺が好きなのは智なのに、アイツが俺のこと好きだって言っただけで俺と別れるの?正直言うとねアイツが俺のこと特別な目で見てるのは何となくわかってた、でもそんなのどうだっていいことだし、もし智が別れるって言って別れたとしても俺はアイツとは付き合わないよ?」
少し怒ったような声に顔を上げ翔くんの顔を見ると怒ったような声と反して悲しそうな顔をしていた。
「翔くん…」
「何年間俺が貴方に片想いしてたと思ってるの?6年だよ?やっと想いが届いて幸せになれたのに、なんでどうでもいい奴の為にこの幸せ壊されなきゃなんないんだよ」
悔しそうに俺を見る翔くん。
「ごめん、そんなつもりなかった…ただ翔くんがなんで俺なんか選んでくれたんだろうって、急に考えちゃっただけで…」