第2章 jealousy
少し歩いたところで大野さんの手が俺の腕から離れた…
俺に声を掛けなかったのは、俺の名前を呼ぶ大野さんの声を、最後に侑李くんに聞かせないため…
大野さんの優しさから出た配慮だったんだろう…
大野さんがそのまま歩いて行くから、俺は黙って付いていった。
侑李くんがいなくなった隣のスペースに行くのが躊躇われて、大野さんの半歩後ろを歩く。
近くの公園に入ったところで大野さんが立ち止まり、前を見たまま話し出した…
「悪かったな。色々気ぃ使わせて…」
普段、人の顔をちゃんと見て話す大野さんが、こちらを見ずに話す…それだけで、大野さんの辛さが伝わってきた…
「いえ、気なんか使ってませんよ」
「だったらいつもみたいに横に並んで歩けよ」
再び大野さんが歩き出したから、慌てて横に並んだ。
「…俺、あいつの気持ち、全然気がつかなくて、夕べ初めてあいつの口から聞かされんだ…
そんなこと考えたこともなかったから、すっげぇびっくりしてさぁ…
でもあいつの気持ちに応えることは出来ないから、俺の気持ち洗いざらい話した…
泣かれたけど、大人しく帰って行ったから、分かって貰えたつもりでいたんだ…
それなのに…変なとこ見せてごめんな…」
「…いいえ」
「あいつが生まれた時、俺、小学2年生でさ
下に兄弟いないから、ほんとの弟の様に可愛がってて
だから、出来れば傷つけたくなかったんだけど…こればっかりはどうしてやることも出来ないから…」
大野さんは侑李くんのこと本当に可愛がって来たんだろう…
それを突然告白されて、優しい大野さんのことだから、悩んだんだろうな…
「あいつ、櫻井にもキツく当たっただろ?ごめんな」
「…俺のことは大丈夫です
たぶん侑李くん、俺と誰かを勘違いしてたみたいなんで…」
「勘違い?」
「えぇ。侑李くん俺に『出会ったのは先かもしれないけど』って言ってたんで…
俺と大野さんが出会ったのなんて3ヶ月前ですもんね。
だから誰かと間違えてるな、って思ったんですけど…」