第2章 jealousy
「櫻井お待たせ」
ひとりで考え込んでいたら、大野さんと侑李くんが、袋を手に戻ってきた。
「じゃあ行くか」
「どこ行くの?」
相変わらず侑李くんの腕は、大野さんの腕に絡んだままで…
見馴れたその光景から、なぜか目を逸らしたくなった。
「お前はもう帰るんだよ」
「えー、なんでぇ?」
「なんでじゃないよ。映画観て、靴買ってやったんだから、もう充分だろ?」
「やだ!まださと兄と離れたくない
この後この人とまだ一緒にいるんでしょ?
だったら僕もまだいる
お願い…僕だけのさと兄でいてよ…」
侑李くんが、泣き出しそうな瞳で大野さんを見る。
「侑李、昨日話しただろ?
それはできないって…俺はお前の気持ちには応えられないよ…
今までどおり、兄貴としてしかお前に接してやれない、そう言っただろ?
それを納得して今日付いてきたんじゃないのか?」
「納得なんてしてないよ!
この人とふたりきりにしたくなくて、納得したふりして付いてきたんだ…」
侑李くんが俺を指差す。
「ねぇ、なんで僕じゃ駄目なの…」
とうとう侑李くんの目から涙が溢れた…
「…ごめん、侑李。でも俺もお前と一緒なんだよ…
求めてるのはただひとりなんだ…その人以外じゃ駄目なんだよ…
だからこそお前の気持ちは分かるし、お前の気持ちをどうこう言うことも出来ない。
ただ俺の気持ちは決まっているから、お前と同じ想いでお前を見ることはないよ…」
侑李くんは大野さんから目を逸らし俯いてしまった。
「ズルいよ、さと兄…そんな言い方されたらもう僕、先に進めないじゃん…
さと兄のこと諦めるしかないじゃん…」
「それが出来るなら、その方がお前の為だよ…
こんなオジサン相手にしてないでさ」
大野さんの手が侑李くんの頭を撫でた。
侑李くんは俯いたまま
「…さと兄、もうこのまま行って、今はまだふたりが一緒にいるところ見たくない…
さと兄の隣に誰かがいても、平気で見られるようになるまでさと兄にも会わないから…」
「…分かったよ。侑李今までありがとな?
またお前と普通に話せるようになるの、楽しみにしてるから」
「…うん、僕も…」
「じゃあ、気を付けて帰れよ…」
そう言うと大野さんは俺の腕を取りその場を後にした。