第13章 おいしいひととき
「翔さん、なにか滑りの良くなるもの持ってない?」
「すべりの良くなるもの?」
「そう、体に塗るクリームとか」
「ボディークリームならあるよ?前にお土産で貰ったんだけど香りが女子っぽくて使ってないやつが」
「それ貸してくれる?」
「うん」
「どこにあるの?」
「寝室にしまってある」
「寝室ってどこ?」
「え?そこの扉だけど」
翔さんがリビング横のドアを指差した。
「よしっ!」
「え?うわっ」
俺は翔さんを抱きかかえ立ち上がった。
「落ちないように掴まっててね」
翔さんに向かって笑顔を見せると翔さんはうっすらと頬を染め頷いた。
「うん…」
ドアを開け寝室に入り翔さんをベッドの上にそっと下ろした。
「クリームどこ?」
「そこの引き出しの一番上に入ってる」
「開けていい?」
「うん、いいよ」
引き出しを開けるとそれらしき花柄の容器があった。
「翔さんこれ?」
「そう」
ベッドに戻りキャップを開け手のひらに出した。
「たしかに香り強いね、誰がくれたの?」
「会社の同期の奴…『翔に似合いそうだから』ってくれた」
この甘い匂いを男に贈るか?女性にならわかるけど…香水並みに匂うぞ?まさかそいつ翔さんのことそういう目で見てんじゃないだろうな?
「ねぇ翔さん、今まで男に言い寄られたことってある?」
「えっ!」
翔さんが固まった。あるんだ…わからなくはないけど。
「あるんだね、付き合ったこともあるの?」
「ないよ!だって俺、男の人好きになったの潤くんが初めてだもん」