第13章 おいしいひととき
「そっかぁ、大変だね会社員って」
「何言ってんだよ、潤くんだって4月からは社会人だろ?」
「まぁそうだけど、まだ働いてないからわからないし」
「そりゃそうだ…会社によっても違うだろうしね」
「潤、これ櫻井さんに運んで」
「はーい」
大将に呼ばれカウンターの上に置かれた定食を取りに行った。
「あれ?大将、この小鉢多くない?」
定食についてないおひたしがお盆に乗っていた。
「あ~、サービス…もうそろそろ閉店の時間だし、櫻井さん独り暮らしだから栄養片寄ってんだろ」
「お~、大将優しいっすねぇ…見掛けに依らず」
「一言多いわ、バイト代減らすぞ?」
「すんません、嘘です」
「いいから早く持ってけよ、櫻井さん腹へってんだろ」
「うぃ~っす」
翔さんに料理を提供した。
「と言うことで大将からサービスだって」
「ありがとうございます、大将」
翔さんがカウンターの中に居る大将に笑顔を見せお礼を言った。
「あ~いいんですよ、どうせ残りもんなんですから」
なんだよその緩みきった表情、あんた奥さん居るだろうが。
「ねぇ翔さん、これからもっと忙しくなるんだよね?晩飯どうするの?この店の閉店に間に合わなくなるんじゃない?」
毎日の様に来ていたから心配になった。前に料理は壊滅的に出来ないって言ってたし。