第2章 jealousy
「今、あいつなんて言った?」
「えっと、今度は大野さんがいないときに誘うって」
「全く…油断ならない奴だ」
大野さんは、岡田さんが立ち去った方を睨んでいた。
それから俺に視線を戻すと
「櫻井。今後、岡田の誘いは全部断れ」
「え?なんでですか?
岡田さん、取引先の方じゃないですけど」
「あいつは駄目だ、危険すぎる」
「岡田さんいい方ですよ?面白いし、優しいし」
「そんなの知ってるよ。それでも駄目なものは駄目なの、分かった?」
イマイチ大野さんが言うことが理解出来ないが、尊敬する大野さんが駄目と言うのなら仕方ない…
「はい、分かりました」
そう言うと大野さんは
「分かればよしっ」
と、嬉しそうに笑った。
「あぁ、それと櫻井。日曜日予定ある?」
「いいえ、特には」
「んじゃさぁ、映画行こう
さっき勝手に断っちゃったから、そのお詫び」
「え?いいですよ。大野さん、週末ご実家に帰られるんですよね?」
「そうだけど、土曜日に帰るから大丈夫
少し顔出すだけだから」
「ゆっくりされた方がいいんじゃないですか?
ご両親に会うの久しぶりなんですね?」
「大丈夫だって、そんな長居してもやることないし
近いんだからいつでも行ける」
「大野さんがいいならいいですけど…」
「じゃあ、決まりな?
櫻井、今観たい映画あるの?」
「いえ、特には」
「ん~、じゃあ好きなジャンルとかってある?」
「基本何でも観ますよ?」
「んじゃ、後で調べて連絡するわ」
「はい、よろしくお願いします」
大野さんがニコッと笑った。
「さ、仕事戻るか」
大野さんが歩き出したから、横に並んで歩いた。
大野さんと映画かぁ。
そういえば、雅紀以外の会社の人とプライベートで出掛けるの初めてだ。
なんかドキドキする。