第12章 gift
「ナンパなんてそんな…ちょっと声掛けられただけです」
「だから、それをナンパって言うんだよ」
智さんが苦笑いをした。
「だって今日は女装してるんですよ?」
「だから?そんなの理由にならないよ?朝言ったよね?そこら辺の女より全然綺麗だって…もうちょっと俺の言うことちゃんと聞こうね?」
「…ごめんなさい…」
「もういいから行くぞ、今度はちゃんと掴まってろよ」
智さんが優しく微笑んで頭を撫でてくれた…それだけで凄く安心する。
今度は智さんの腕をしっかりと掴んだまま離さず買い物を続けた。
冬物の服数点と智さんと色違いでお揃いのルームウェアを購入…智さんが俺に向けて手を差し出してくれたから思わず手を握ると
「はははっ、違うよ、荷物持つから貸して?」
「え、大丈夫ですよ…自分で持てますから」
「女の子にそんなの持たせてたら俺が駄目な男になっちゃうでしょ?」
「でも…」
「いいから、貸して」
紙袋を智さんに渡すと自分の荷物と一緒に片手で持ち空いてる手で俺の手を握ってくれた。
その後は美術館を見学して、ゆっくりと公園の中を歩いた…日が落ちてくると気温も下がってきてもうすぐ冬なんだなぁ、と実感する。少し身震いした俺に気付いたのか智さんが立ち止まって俺の方を見た。
「寒い?」
「そうですね、少し冷えたかも」
智さんはさっき買い物した袋の中からグレージュ色のストールを出し俺の首に巻き付けた。
「智さん、これ?」
「プレゼント…仕事用に丁度いいだろ?今の服装にはイマイチだけど風邪引くと大変だから我慢して巻いとけ」
「我慢なんて、そんな…ありがとうございます」
智さんのくれたストールは軽くて柔らかくて暖かくて優しい色をしていて…智さんみたい。
「気に入って貰えた?」
「もちろん!でも智さんの誕生日なのに俺がプレゼント貰っちゃっていいんですか?」
「今日はすげぇ楽しませて貰ったからな、少しはお返ししないと」
「楽しませて貰ったのは俺も一緒です…外で普通にデート出来るなんて思ってもみなかった」