第12章 gift
「お前場所考えろよ、電車の中だぞ?そんなデカイ声出すなよ」
「これが落ち着いていられるか!女とイチャイチャしやがって!櫻井くんに言いつけるぞ!」
「言いたきゃ言えばいいだろ?」
「なんだ、開き直るのか」
「違うよ…翔は知ってるから」
「なに⁉櫻井くん公認の浮気だと?」
「浮気じゃねぇし…」
「じゃあ、本気なのか?櫻井くんどうするんだ!俺が貰っていいのか?」
「やらねぇよ…お前もしつこいな~」
「当たり前だろ、あんな可愛い子なかなかいないぞ…その子よりよっぽ、ど?」
興奮状態の岡田さんが漸く俺の顔を見た。
「えーっ⁉」
目を見開いた岡田さんの叫び声が響いたとき丁度駅に着いてドアが開いた。
智さんは俺の腰を抱いたまま電車を降りた。岡田さんも慌てて後を追って降りてきた。
「なんで?どうして?櫻井くんだよね?」
「そうだよ」
「こんにちは、岡田さん」
「こんにちは、って違うわっ!なんでそんな格好してるの?超可愛いんだけど!」
「お前さっき『そんな子よりよっぽど』って言ってたよな」
「いや、だって顔見てなかったから…顔見たらすっげぇ可愛いし、しかも櫻井くんそっくりだから吃驚して叫んじゃったよ」
「てことで、浮気じゃないし、翔は渡さないから…またな」
「あ、ちょっと待て…写真だけ撮らせて?」
なんでみんな写真撮りたがるんだろ…
「会社の奴らには見せるなよ?」
「わかってるって、あ、大野撮ってよ」
「は?誰が一緒に撮っていいって言った?撮るなら翔単独だよ」
「いいじゃねぇかよ、ケチ臭い…もういいよ自分で撮るから」
そう言って俺の肩に手を回した。
「おまっ!」
「みんなにバラすぞ?写真1枚くらいいいだろ?」
ニヤっと笑った岡田さん。
「…1枚だけだぞ」
「サンキュー、はい櫻井くんレンズ見て」
「はい」
カシャッ
「ありがと~、宝物にするねぇ」
「大袈裟ですよ、岡田さん」
「大袈裟じゃないよ、いいなぁ大野はこんな美人とデート出来るんだから」
じぁな、と手を振り岡田さんは歩いて行った。