第12章 gift
松岡さんのお店を出ると当たり前のように智さんが腕を出すからまたそこに腕を絡めて歩き出した。
初めは恥ずかしかったけど、慣れてくるとこの距離感が嬉しくて体を密着させるように智さんの腕にしがみついた。
朝食を摂ってなかったからちょっと早めのランチをする為に電車に乗って移動した。
電車の中では智さんが俺の腰に手を回してくれるからピッタリとくっついていられる。
「翔が嫌じゃなければさ、またこうしてデートしようか」
「いいんですか?」
「俺は全然いいよ?普通の格好じゃん…でも翔は女装しなくちゃいけないから嫌かな、と思って」
小声で話す俺たち…腰を抱かれてる状態だから智さんが俺の顔に近くにあってちょっと恥ずかしくなった。
「なんで顔紅くしてんの?」
「だって、こんな近くに智さんがいるから…」
「家ではもっと近くにいるでしょ?」
「そうなんですけど…外を歩きながらなんて今までないし…なんか照れます」
「そっか…でも俺もちょっと照れるかも」
「智さんも?」
「うん、確かに家では近くにいるけど、座ってたりベッドの中じゃん…こんな風に外で腰を抱いたことなんてないから、だからさ、またしたいな」
智さんが喜んでくれて良かった。朝、女装させられた時はどうなる事かと思ったけど、こんなに喜んで貰えるならまたしてもいいかな。
智さんの肩にそっと凭れ掛かって智さんの顔を見た。
「またしましょうね…」
「おう」
智さんが嬉しそうに微笑んでくれた。
その瞬間俺がもたれ掛かってる逆の肩をガシッと掴む手があった。
「大野!お前何してんだよ!」
この声…まさか…
智さんが振り向くと
「またお前か…岡田…」
やっぱり岡田さんだった。