第2章 jealousy
侑李くんは大野さんと腕を組んだまま、ずっと大野さんの顔を見ながら楽しそうに話している。
大野さんは侑李くんの話を聞いて相槌を打っていた。
俺はそんなふたりの姿を、後ろから見てるしか出来なかったんだけど…
なんだか寂しく感じたのは会話に入れなかったからだろうか…
ホームに降りる階段に差し掛かる
「侑李、お前あっちだろ?」
「え~、もっとさと兄といたいなぁ」
「駄目だよ、まだ仕事残ってるんだから」
「んー、もう少しだけダメ?」
「ダメ。週末帰るって言ってるだろ?
そんときゆっくりな」
「…わかったよ」
侑李くんは渋々といった感じで大野さんから腕を離した。
「行くぞ、櫻井」
「あ、はい」
大野さんに呼ばれたから、侑李くんに頭を下げて大野さんの元へと走り出した。
一瞬、目の合った侑李くんに睨まれたような…
俺、侑李くんの気に障るようなこと何かしたかな…
「悪かったな」
大野さんと電車に乗っていると、突然大野さんに謝られた。
「何がです?」
「櫻井が話に入れないようなことばっか喋ってたから」
「そんなこと気にしないでください
侑李くんに会ったの、ひさしぶりなんでしょ?
侑李くん凄く楽しそうでしたよ?」
「ん~、あいつ昔から俺にベッタリでさぁ…
友達と遊びに行くって言っても付いてこようとするし、俺に彼女が出来たときも、荒れちゃって大変だったんだよ」
ドキッとした…
大野さんのプライベートな話を今まで聞いたことなかったけど、彼女がいたっておかしくないんだ…
こんな素敵な人なんだから、周りがほおっておくはずがないよな。
「櫻井?」
「…あ、はい?」
大野さんに呼ばれて顔をあげた。
「どうした?急に黙りこんで」
「あ、いや、大野さん彼女いるんだなぁって…」
「あ~、昔の話しな。今はいないよ
会社に入ってからはそれどころじゃなくて」
大野さんが苦笑いしたけど、ちょっとほっとしたのはなんでだろう…
「そうなんですね」
「櫻井は?」
「え?」
「彼女…いるの?」
「あぁ、俺もいないですよ」
「そっか…」
大野さんがちょっと笑ったように見えたのは気のせい?