第11章 幼馴染みのアイツ
ドアに背を預け座り込んだまま動けなかった。
どれくらいそうしてたんだろ…ドアをノックする音の後に雅紀の優しい声が聞こえた。
「和、起きてる?」
戻ってきてくれた…それだけで嬉しくなるのに、俺は素直に言葉に出来ない。
「なんで戻ってきたんだよ」
「和と話がしたくて、だから開けてくれる?ちゃんと顔を見て話したい」
「なに?やっぱり別れようって?別に構わないよ?さっきわかったから雅紀の本心は」
「本心?」
「そう、本心…雅紀は俺の事なんて好きじゃないんだ」
「違うよ和、俺は和の事好きだよ?」
「だとしても俺の好きと雅紀の好きは違う」
「なんで?同じだよ…お願いだからここ開けて?ちゃんと話ししよう?」
「やだっ!もう雅紀の顔なんて見たくない」
「和…お願い、和が見たくなくても俺は和の顔が見たいよ…小さい頃からずっと大切にしてきてやっと想いが届いたんだから」
「だったらなんでもっと触れてくれないの?俺は雅紀に触れて欲しいのに…好きだったら普通触れたいと思うんじゃないの?」
「触れたいよ…俺だって和に触れたくて仕方がない…でも一度触れたら歯止めが効かなくなる…和の事滅茶苦茶にしちゃいそうで怖いんだよ…ずっと大切にしてきたからこそ壊したくないんだ…」
雅紀の声が苦しそうだった…その言葉を信じていいの?俺の事が大切過ぎて手が出せなかったってこと?
雅紀の顔が見たい…今雅紀はどんな表情で俺の事を考えてくれてるの?
部屋のドアをゆっくりと開いた。
「和…」
今にも泣き出しそうに歪んだ雅紀の顔が見えた。