第11章 幼馴染みのアイツ
雅紀は優しく頭を撫でながら俺が落ち着くのを待ってくれた。
「和くん、大丈夫?」
櫻井さんの優しい声が聞こえた。こんなに優しくて綺麗な人だったら雅紀が好きになるのは当たり前だ。
それなのに俺は雅紀にしがみついてしまった。
「ごめんなさい…」
雅紀から体を離し櫻井さんの方を見て謝った。
「え?なんで俺に謝るの?」
「だって、雅紀借りちゃったから…」
「え?雅紀借りたってどういうこと?」
驚く櫻井さん。
「え、あの、雅紀と櫻井さん、付き合ってるんじゃないんですか?」
「え!そうなの?翔⁉」
俺とぶつかった人が驚いた。
「そんな訳ないでしょ!なんで智くんが驚くのよ」
「だって和くんがそう言うから…」
「ふ~ん、智くんは俺のこと信用してないんだぁ」
「いや!そんなことないよ?信用してる!信用してます!だから今日だってふたりで出掛けるの認めただろ?」
「どうだか?ただ寝坊しただけでしょ?」
なんだなんだ?何を言い合ってるんだ?このふたり。
「もう、痴話喧嘩は後にしてよ~、今は和の事が先でしょ?」
「あ、ごめん和くん話の途中で…雅紀と俺は付き合ってないからね?俺が付き合ってるのはこっち…」
そう言って俺とぶつかった人を指差した。
「へっ?」
「雅紀の同級生の大野です。ごめん、和くん…何か誤解させたみたいだね、俺が寝坊しなければ翔と雅紀ふたりきりになんてさせなかったのに」
「ほんとだよ、大ちゃんのせいで和泣かせちゃったじゃん」
雅紀が苦笑した。