第11章 幼馴染みのアイツ
跳ね返り倒れそうになった所を相手の人に腕を掴まれなんとか倒れずに済んだ。
「おい、大丈夫か?」
「あ、はい、ごめんなさい…ありがとうございました…」
頭を下げて立ち去ろうとしたら後ろから櫻井さんの声が聞こえた。
「智くん、その子掴まえてて!」
「え?あっ!」
1度離れたその人の手が再び俺の腕を掴んだ。
「え?なに?どうした?」
俺と櫻井さんの顔を交互に見るその人。
「その子が和くんなの」
「え、そうなの?なんで泣いてんの和くん、そんなに痛かった?」
「え?和が泣いてる?」
駆け寄って来た雅紀。泣き顔を見られたくなくて下を向いた。
「和?どうした?どこか痛い?」
膝を曲げて下から覗き込む雅紀…そんな心配そうな顔して見ないでよ、すがり付きたくなるじゃん。
雅紀の手が俺の頬を撫でた。
「和?」
優しい雅紀の瞳…優しい雅紀の声…俺だけのモノにしたかったのに。
「ふっ、うっ…」
思わず嗚咽が漏れた…
「なんだなんだ?何があったんだ?」
「わからない…一緒に参考書選んで買っただけだもん」
櫻井さんの困惑した声…そうだよな、櫻井さんにはわからないし、俺がこんな態度取ったらおかしいんだ。
親切に選んでくれたのに…
「ご、め、なさい…俺が、勝手に泣いてるだけだから…」
雅紀がそっと俺を抱きしめてくれた。
「まさ、きぃ…」
俺は雅紀の洋服をギュッと掴んだ。