第11章 幼馴染みのアイツ
土曜日、参考書を探しに本屋へ向かう。あまり外に出るのは好きじゃないけど事情が事情だから仕方ない。
本屋に向かって歩いていると道の先によく知ってる顔を見つけた。
雅紀だ!嬉しくて駆け寄ろうとしたら雅紀が笑顔を見せた。俺の大好きな雅紀の笑顔…でもそれは俺に向けられたものじゃなかった。
「翔ちゃん!」
雅紀の元へ近づいてきたのは俺の知らない人だった。
「雅紀、ごめん遅くなった」
翔ちゃんと呼ばれた人は申し訳なさそうに雅紀に謝った。
「ううん、俺も今来たとこだから」
「そっか、なら良かった」
綺麗な笑顔を見せる『翔ちゃん』、雅紀もなんだか嬉しそう。
そんなふたりの様子を見ていたら、ふとこちらを向いた雅紀と目が合った。
「あれ?和?」
雅紀が俺に駆け寄ってくる。
「どうしたの?和が外出って珍しいね」
雅紀が話しかけてくれるけど雅紀の顔を見ることが出来ない。
「ちょっと参考書を探しに」
「あ、そうなんだ…俺たちも本屋に行くところだから一緒に行こうよ」
「え?でもいいの?あの人に聞かなくて」
俺は『翔ちゃん』の方を見た。
「あ~、大丈夫そういうの気にする人じゃないから」
雅紀とは一緒にいたい…でもあの人と一緒にいる雅紀は見たくない。
「雅紀知り合い?」
『翔ちゃん』が近づいて来た。
「うん、家の近所に住んでる和」
「え?和くん?て、あの?」
「そう、幼馴染みの和」
「へ~、君が和くんかぁ」
嬉しそうに俺を見る『翔ちゃん』。
「はじめまして、和くん。雅紀の同級生の櫻井です…よろしくね」