第11章 幼馴染みのアイツ
もうすぐアイツが家の前を通る時間。
用もないのに外に出る…キョロキョロしてたら遠くにアイツの姿が見えて、俺は気づかないフリをして郵便受けを開けた。
「あ~、和」
大好きな声が聞こえて振り返ると爽やかな笑顔で手を振るアイツがいた。
小走りで俺に駆け寄ってくる雅紀…内心嬉しいんだけどそれを表には出さない。
「よう雅紀、今帰り?」
「うん、そう…和は何してたの?」
「ん、郵便来てないか見に来た」
「ふ~ん、何か届く予定なの?」
「え、あ、まぁ…今日は来てないみたいだけど」
「そっか、でもそのお陰で和に会えたから俺的にはラッキーだな」
ニコッと笑われ心臓がドキッと跳ね上がった。
「和、受験勉強捗ってるの?」
「ん、まあまあかな」
ほんとは滅茶苦茶頑張ってるよ、雅紀と同じ大学に入りたいから。
ひとつ年上の雅紀、小さい頃は『まぁくん』って呼んで後を追ってくっついていた。
雅紀が高校に入ると一緒にいる時間が減って、そして自分の気持ちに気がついた。
誰にも話せない俺の気持ち…
高校も雅紀の後を追って入学した。対等な立場になりたくて呼び方を『まぁくん』から『雅紀』に変えた。
でも、全然追い付けなくて…また、雅紀は俺の前を行く。
いつになったら俺は雅紀にとって『幼馴染み』じゃなくなれるんだろう。
「じゃあまたな、勉強頑張って同じ大学来いよ」
頭を撫でて立ち去る雅紀…見えなくなるまで雅紀の背中を見送った。
よっしゃー!頑張るかぁ!