第10章 最愛のひと
それから俺と翔は付き合い始めた。
「智、愛してる…」
優しく愛を囁き続ける翔…人に愛されるって幸せな事なんだと実感出来る日々。
それを親の都合で突然壊される事になった。
「嫌だよ!俺結婚なんてしないから!」
そういい続けた翔。でも経営が厳しいのは家の方で…
「翔…ごめん、ねぇちゃんと結婚してくれ…」
そう頭を下げた俺を抱きしめながら翔は泣いた。
「わかったよ…結婚する…でも智の為だから、俺が愛してるのは智だけだから…」
「うん、ありがと…翔」
こうして翔とねぇちゃんの結婚が決まった。
俺はいずれ引き継ぐ会社の為に恋人を利用した。
「翔…ごめんな、俺の為なのに」
純白のタキシードを着た翔を抱きしめた。
「智、これからも俺の側に居てくれるんだよね?」
「あぁ、ずっといるよ…そう約束しただろ?」
「うん…」
翔の指が俺の顎に掛かり上を向けられると翔のふっくらとした唇が落ちてきた。
「ん、ふっ」
深く絡み合う舌…挙式直前になんて罪深い事をしてるんだろう。
「ん、しょ、お…そろそろ行かないと…」
「嫌だ、もう少しこのまま…」
ぎゅっと俺を抱きしめる翔…
「駄目だよ、ねぇちゃんが待ってる」
「智…」
翔の体が離れると俺は振り返ることなく部屋を出た。