第10章 最愛のひと
俺が向かったのは式場ではなく…
『ガチャ』
「智…」
「よっ、相変わらずのイケメンぶりだな…すっげぇ似合ってるぞ、タキシード」
「そんなこと言うなよ…」
眉毛を下げて今にも泣き出しそうな顔をする新郎。
「わりぃ、嫌味とかじゃなくほんとにそう思っただけだから」
「智…」
「ごめん…お前の気持ち考えてなかった…翔」
俺と翔は小さい頃から友達だった。お金持ちのボンボンが通う学校の同級生で、親同士がライバル会社なんてことは関係なくずっと親友でいた。
そんな俺たちの関係が変わったのは高校3年生になってから。
俺と翔が通っていたのは男子校だったが、元々他の高校の女子からも目を付けられていた翔が他校のミスなんちゃらに告白された。その噂が瞬く間に広がって周りの奴らが女を紹介してもらう為に翔とそのミスなんちゃらをくっつけようとした。
困った翔は俺に相談してきた。
「なんで?いい話じゃん、付き合っちゃえば?」
そう言いつつも内心穏やかじゃなかった俺、その理由はなぜだかわからなかったが次に放たれた翔の言葉でスッキリした。
「俺が好きなのは智だよ…他の女の事なんて考えられない…」
俺の好きな真っ直ぐな瞳でそう告げられた。
あぁ、そっか…だからずっとモヤモヤしてたんだ。
「智…俺の事気持ち悪い?」
「いや、全然…俺も好きだわ、お前の事…」
そう言った後のお前の驚いた顔、今でも忘れらんねぇよ。