第10章 最愛のひと
今日は俺の最も愛する人が結婚する。
『コンコン』
「はい、どうぞ」
『ガチャ』
「あ、智 ねぇどう?おかしくない?」
純白のウェディングドレスに身を包み鏡越しに話しかけるねぇちゃん。
「ん、すげぇ綺麗だよ…」
「なに、その少ないコメント…本当にそう思ってる?」
「もちろん思ってるよ」
「そう、まぁしょうがないわね…智に聞いたのが間違いだったわ」
ほんとに綺麗だよ、ねぇちゃん…世界一綺麗だ。
俺の家は代々続く企業…ただやり方が古いのか親の代になって経営が悪化し、どうにもならなくなった親父はここ数年で力を付けてきた企業と提携を結ぶことにした。
ねぇちゃんの結婚相手はそこの社長の長男。所謂計略結婚だ。
仕事で忙しかった両親、お手伝いさんはいたが俺とねぇちゃんはふたりで過ごすことが多く親の愛情を感じた事があまりなかった。
そのせいか俺は俺の世話をしてくれるねぇちゃんの事が大好きだった。
「ねぇちゃん、幸せになってよ…」
「ありがと、智…大丈夫よ?旦那さまはとても優しい人だから」
嬉しそうな笑顔で答えるねぇちゃん…
俺も知ってるよ、ねぇちゃんの旦那がとても優しい奴だって…
「んじゃ、俺式場行ってるから」
「うん」
ねぇちゃんの控え室を出た。