第9章 as it is
「和さんって大野さんと仲いいですよね、他の人とはちょっと距離置いてる感じなのに」
「あぁ、智はこの課で唯一の同期だし、俺と同じで人の事にあまり介入してこないから一緒にいても気が楽なんだよ」
「へ~、そうなんですか…でも大野さん翔ちゃんの事大分可愛がってるみたいだけどなぁ」
「え?智が?あいつそんな面倒見良かったっけ」
「翔ちゃん可愛いからなぁ、誰でも好きになっちゃうんですよ…小さい頃からそうでした」
「なに?お前櫻井のこと昔から知ってるの?」
「ええ、小中と同じ学校でした…仲良くしてましたし」
「ふ~ん、で、お前も櫻井の事好きだった一人なんだ」
「そうですね、あんなに素直で心が綺麗な人間ってそうそういないですから」
笑顔で話す相葉を見て心がズキッとした。櫻井もまた俺と真逆の人間…それを誉めてる相葉を見て俺が否定されてる気がした。どうせ俺は素直じゃないし、心も汚れてるよ。
「和さんも可愛いですよ」
「は?」
相葉から発せられた突然の言葉、意味が理解できなかった。
「だから、和さんも可愛いです」
ニコニコの笑顔で真っ直ぐに俺を見る相葉。
「ば、ばっかじゃねぇの?お前人見る目無さすぎ…あ~、それともあれか、俺がお前より背が低くてちっちゃいから馬鹿にしてるのか」
「違いますよ、もちろん見た目も可愛いですけどね…でも性格も可愛いです」
「そんな事言われた事ないよ」
「それは良かった」
「なんでだよ?」
「ライバルは少ない事に越したことはないですから」
爽やかな笑顔でなに言ってんだ?完全に俺の理解の範囲を越えた。