第8章 Lovers
先に風呂場に入ると小さいながらも檜で出来た露天風呂。星空が広がってて気持ちがいいな。
夜空を見ながら湯船に浸かっていると漸く翔が入ってきた。随分と時間が掛かったな。
体を洗い、翔も風呂に入ってきたが俺に背中を向けるように座ってる。
「なんで後ろ向きで座ってるの?こっち向きなよ」
そう言ってもこちらを向く気配がない。
「翔?」
肩越しに顔を覗き込むと頬を赤くして俯いた。
「どうしたの?まさかもう逆上せたとかじゃないよね?」
「いえっ、違います…」
俯いたままの翔の頬を両手で挟みこちらを向かせた。
「じゃあ、どうしたの?」
「あ、あの…」
翔は俺の手を掴み、外そうともがく。それをさせまいとこちらも力を加えると
「智さん、離してください…」
「どうしたんだよ」
「…からだ…」
「からだ?体がどうしたの?」
「智さんの…裸、見るの初めてで…その、恥ずかしい…」
「え?俺の裸って見たこと無かったっけ?」
コクりと頷く翔。
「家に泊まった時とか見てない?普通に着替えとかしてただろ?」
「…見ないようにしてました」
「そうだったの?なんで?」
「なんとなく…見ちゃいけない気がして…」
「見ちゃいけないってなんだよ…そんなわけないじゃん、俺は翔の体見てる上に触ってんじゃん」
そう言うと翔は更に顔を紅くした。
「…そうなんですけど…」
あぁ、そっか…男同士だけど恋人である俺の裸は翔にとって見ることも照れるのか…確かに俺も初めて翔の体に触れた時はありえないくらいドキドキしたしな。
そのせいで風呂に入るのも躊躇っていたのか。
翔の手を取り俺の体に触れさせた。翔の手はビクッとし離れようとしたがそのまま押さえつけた。
「あの、智さん…」
「ん?」
「手…放してください…」
視線をどこに向けたらいいのかわからないのか、目をぎゅっと閉じる翔…
「いつもは俺が翔に触れてるけど、翔は俺に触れたくない?」
目を閉じたまま小さく首を振る翔。
「…触れたい…けど、心臓がドキドキしておかしくなりそう…」