第8章 Lovers
暫くすると翔が上司から解放され戻ってきた。
「おつかれさん、疲れたろ」
「いいえ、皆さんのお話聞けて楽しかったですよ?」
笑顔で答えるこいつに嘘は無いんだろうな…だから本来なら上司たちの昔話や自慢話も嫌味満載なのに純粋な眼差しで見られると長引くことがないんだ。その代わり翔と話したい人間が多くてあちこちで捕まるけどな…
「櫻井くん、お疲れ~」
またこいつか…ビール瓶片手に笑顔の岡田がやって来た。
「岡田さん、お疲れさまです」
翔は笑顔で答えるがさすがにこれを止めさせるわけにはいかないよな…
岡田はいい奴なんだ…翔にちょっかいさえ出さなければ。
「はい、どうぞ」
ビール瓶を翔に差し出した。
「あ、すみません…ありがとうございます」
岡田が翔にビールを注ぐと今度は翔が瓶を持ち
「岡田さんもどうぞ」
「ありがと~、櫻井くんに注いで貰えるなんて今までで一番旨いビールになるなぁ」
「お前はなんで次から次へとそういう言葉が出るんだ」
少し呆れ気味に言うと
「え~、だって本心だもん。思ったことを素直に口に出してるだけだよ…大野は言ってあげないの?こんな可愛い子目の前にして」
いや、言うけどさ…翔の場合はっきり言わないと伝わらないから。
「ねぇ、櫻井くん…大野ってベッドで優しい言葉囁いてくれないの?」
「え、あ、えと…」
顔を赤く染めて答えに詰まる翔。
「もう、岡田ってばそんなこと翔ちゃんに聞いちゃ駄目だよ~」
いつの間にか隣に座ってたニノが話しに入ってきた。
「なんで?知りたいじゃん、普段クールな大野がどんな風に櫻井くんと付き合ってるのか」
「確かに普段はクールだけどねぇ、翔ちゃんといる時の智って超デレデレなんだよ~今まで見たことないような笑顔するんだから」
「ニノ!余計なこと話すなよ」
「だって事実じゃん」
「見てみて~、デレデレの大野の顔」
「お前には絶対見せねぇよ」
「ケチ~!俺フラれたんだからそんぐらい見せろよ」
「嫌だよ」
「じゃあ、代わりに櫻井くん一緒に温泉入ろ?」
「それも駄目!」
「なんだよ、ほんとにケチだな」
「そういう問題じゃないだろ」
「まあ、しょうがないか…そんだけ大野が櫻井くんを大切にしてるってことだからな」