• テキストサイズ

恋歌 《気象系BL》

第8章 Lovers


社員旅行当日、今日は他の課も一緒に行くから普段接することの少ない社員たちとも交流しなくてはならない。

本来の目的がそこなんだからしょうがないことではある。が、予想はしていたが観光地に着いた途端、翔の回りには女性陣が集まってきて

「櫻井くん、一緒に写真撮ろうよ」

翔が返事をする前に腕を掴まれ連れ去られる。こういう時、女性の逞しさを感じるなぁ。さすがに女性相手にヤキモチ妬くのは不味いよな…女のカンは鋭いし…ほんとはスッゲェ嫌だけど大人しくするしかない。

「大野さん…」

名前を呼ばれ振り替えると経理課で翔の同期の女性が立っていた。

「はい?」

「…あの、写真一緒に撮らせて貰えませんか?」

「え?俺?」

「…はい」

俯いて小さな声で返事する。きっと勇気を振り絞ったんだろうな…断ったら気の毒だなという思いから

「いいよ、写真くらい」

そう言うとその子は思いっきり笑顔になった。

「ありがとうございます!」

近くで見守っていた同じ課の女性が近寄ってきて

「よかったねぇ、ほら撮ってあげるから携帯貸して」

「うん、お願いっ」

「行くよ~、はい、笑って!」

カシャッ

「ありがとうございました!」

その子は笑顔でお礼を言って離れていった。振り返ると泣きそうな顔をした翔が立っていた。

「し…櫻井?どうした?」

「…彼女…智さんのこと好きなんです…」

「あぁ、そう…」

まぁ、そうだろうな…普段付き合いの全くない奴と写真撮ろうなんて、そんな理由でもなきゃ撮らないだろうし、あの態度見てればなんとなくは分かる。

俯いて表情の見えない翔の元に近づき顔を覗き込むと瞳には今にも溢れ落ちそうな涙が溜まっていた。

「翔?」

「俺、この前彼女に聞かれたんです。智さんのこと色々と…でも、何も教えなかった…彼女の気持ち分かったのに…俺、嫌な奴なんです…」

翔の瞳から涙が溢れた。俺は慌てて人がいない物陰に翔を連れていき涙を拭った。
/ 760ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp