第16章 好きなんだ
『落ち着いてください!!分隊長、今は一人にしておいてやってください!!
』
お医者さんが止めてくれているみたい。
『っく、アン………!!!』
『っあ!!分隊長、お待ちを!』
ガラッとドアが開き段々と大きくなる足音に私はどんどん顔が青ざめていく。
やだ、
会いたくない、
『…………………っ、』
エルヴィンさんはひどく動揺していた。
『………………見ないで、ください……………ひとりに………してください……………』
『……………アン…………私は……………』
『っ、エルヴィンさんは……………悪くないです、でも……………今は…………会いたくないんです…………おねがい、です………………』
エルヴィンさんのあんな顔はもうこれ以上みたくない。
『出ていって!!』
そこにあった枕を投げ飛ばすとエルヴィンさんにかする。
一瞬やってしまった、と思ってしまうが、エルヴィンさんを見ると抑えきれそうになく、そのまま布団を頭からかぶる。
『…………………報告だけ、しても構わないだろうか』
布団の外から声が聞こえる。
『俺は…………アンにそんなことをしたあの兵士達に殺意がわいた。だが、俺が一瞬で殺すよりも巨人の胃の中に入ることの方がその罪の重大さがわかると思って……次の壁外調査ではおとり……即ち餌になってもらうよう申請済みだ。だから………もう君にそんなことをする輩はいない……………』
いつのまにか一人称が戻っていることに気づく。
エルヴィンさんは壊れ物を扱うかのように優しく手を置き、そのまま医務室を出ていく。
エルヴィンさんは怒っても一人称は戻らない。なのに、今回は戻ったということは………それだけ激怒しているということ。
なのに私は…………そんなエルヴィンさんを突き放してしまった。