第13章 一匹狼
今は以前みたいに隠れながらの生活をしていない。もちろん部屋はエルヴィンさんの隣だけど、あの時エルヴィンさんとの事で揉めた子達は既にいないし、当時のことを知っているのは幹部の人たちくらい。だからトーマスとも話せているし、食堂にも行けている。
『どうぞ』
『ありがとう。君のいれる珈琲は格別だからね、これからもよろしく頼むよ』
チュ、と音を立てて手の甲にキスをする。
『今晩…………私の部屋に来なさい』
私たちの関係は続いている……………いや、一言で恋人とは言えない関係にまで進んでいる。
お互い大事な仲間や信頼のおける同期が亡くなるにあたり精神面から支えられる人が欲しかったというのもあるのかもしれない。
つまり、上司と部下であり、恋人であり、友達であり、仲間である。
『………はい。』
これは彼からのお誘いの言葉。お誘いは1週間に2、3回。
お誘いがあったとしてもお互い気が乗らなくて昔みたいにお話で終わる日もあれば朝まで愛し合う日もある。