第6章 マドレーヌ
…ちゃぷん…。
お風呂場全体に響き渡る
お風呂の水の音。
…はあ。
僕は、好きになっちゃいけない人を
好きになっちゃった…。
だって、しょうがないじゃん…。
お兄ちゃん、カッコイイんだもん。
それに優しくて…。
みんなの理想のお兄ちゃんが
翔兄なの…。
好きにならない訳ないじゃん…。
僕は、一生この想いを
胸に秘めたまま生きていかなくちゃ
ならないの…?
和「…翔兄…」
ぽつりと呟く…。
和「…翔兄、大好き…」
伝えても、受け止められない想い。
僕は、お湯の中に潜った。
和「…翔兄、上がったよ〜」
翔「ああ、飯食えよ〜」
和「…はーい」
お父さんと、お義母さんは
仕事で夜も遅い。
だから、不器用だけど全部
翔兄がやってくれるの。
僕もたまに手伝ってるんだよ…?
僕がテーブルに着くと
翔兄が笑顔で聞いてきた。
翔「…学校、どうだ…?」
和「…え…?」
翔兄は、何も知らない…。
学校になんか、僕の居場所がない事…。
だけど僕は、翔兄に心配掛けたくないから…
無理やり笑顔を作るの…。
和「…うん、すっごく楽しいよ。
もう少しで卒業なのが、寂しいくらい…」
僕は、自然に笑った筈だった。
だけど、翔兄の顔がみるみるうちに
険しくなっていく…。