第5章 フォンダン・オ・ショコラ
AD「…佐藤さん…!これ、お願いします!」
翔「…え?」
…佐藤さん…?
…あ!俺、今日は佐藤っていう名前だったんだ。
すっかり忘れてたよ。
翔「…あ、はい。どうしたらいいですか?」
AD「この備品、相葉さんが使うんで
持っていて下さい」
翔「…え…」
…相葉さんが使う…?
それを俺が渡すの?
いやいやいや…!
それって結構…いや、かなりヤバイよね…?
もし、相葉くんにバレたら…。
周りの人に迷惑掛けちゃうよ…。
AD「…あの、佐藤さん?」
翔「…えっ!あ、えっと…」
AD「とにかく!これ、お願いします!
もう本番始まっちゃうんで…!」
翔「…え!あ、ちょっと…!!」
ADさんは、俺にそれだけ言い残すと
駆け足で違う所に言ってしまった。
俺の手元には、本番で相葉くんが使う
備品が…。
絶対、渡さなきゃいけないじゃん。
もう…どうしたらいいの…?
でも、そんなにウジウジしてられないもんね…。
本番始まっちゃうし…。
よし、取り敢えずやってみよう。
俺は、覚悟を決めて
ゆっくりと相葉くんに近づいた。