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SECRET NIGHT【八乙女楽】

第1章 雨の帰り道


ホントは酔っ払った楽さんが、あたしに絡んできたところから、あたしたちの関係が始まったのに。

っていうか、すごく嬉しかったのに。

なんか、違うこと言われるの、ちょっとショックなんだよね。


『……わかってるよ、ごめん。』

「……ううん。」

『酔った勢いだったのが、情けねーんだよ…』

「楽さん?」

『なんか、ふたばにちゃんと告白したかったなって、今更、思ったりしてんだよな。』


ちょ…
恥ずかしいんだけど…

あたしは焦って、視線を反らした。


『なぁ、ふたば?』

「うん?」

『今から、桜、見に行かないか?』

「え?」

『一年経っちゃったけど、やり直させてよ。』

「楽さん?」


あたしは首を傾げて、彼の目を見つめた。

すると楽さんは、あたしをじっと見つめて言った。


『ちゃんとした告白させて。』


ドキッとした。
そして、そう思ってくれてることが嬉しかった。

でも、今日はあいにくの雨。
アイドルの楽さんを外に連れてくなんてできないよ。


「でも、雨降ってるし、風邪引いちゃうよ。」

『大丈夫だっつうの。』

「でも…あたしは、あの日の言葉で十分だよ?」

『ダメ!オレが納得してないから。』


真剣な目で言われたら……

断れないよ……


「……もぉ。」

『なに?』

「しょうがないなぁ。付き合ってあげる。」

『んだよ?だったら最初から素直に聞きゃいんだよ。』


照れ隠しの強がり。

そんな楽さんが好きなんだ。


『じゃあ、行くか。』

「うん。」


立ち上がると、サッとあたしの鞄を手に持った楽さん。

いつものことで…
断ると機嫌を損ねちゃうから、あたしはお礼を言う。


「ありがと。」

『手ぇ貸せよ。』

「え?」

『いいから。』


そう言うと、楽さんはあたしの手を掴んだ。


「ダメだよ!誰かに見られたら…」

『誰も見てねぇよ。』

「でも……」


あたしが渋っても、彼は聞く耳持たずで歩き始めた。

あたしは仕方なく、そんな彼に手を引かれたまま歩く。


そして、車に着くと、助手席のドアを開けてくれた。
ホントに、どこまでもスマートなんだよなぁ。

あたしにはもったいない人だよ。


『どうかした?』

「ううん、なんでもない。ありがと。」


あたしはそう言って、助手席に乗り込んだ。
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