第1章 雨の帰り道
抱き締められたあたしは、楽さんの胸に顔を埋めた。
微かに香る香水の匂いで、あたしは楽さんを感じて幸せになる。
『ふたば?』
「うん…」
『ずっと、、、側に居てくれないか?』
背中に回された手に力がこもる。
「……ホントに、いいの?あたしなんかで?」
『あたしなんかって言うな!』
「…楽さん?」
『オレはふたばがいいんだよ。』
その言葉に、あたしは自然と涙が溢れてきた。
あたしがいいって…
その言葉だけで、幸せだ…
『…ふたば、返事は?』
「………う…ぅ……ぅ……。」
答えたいのに、言葉が出てこない。
そんなあたしを見て、楽さんの笑う声が聞こえた。
『わかったよ、お前の気持ちは。』
「……ぅぅ……ぅ……んっ……。」
『しょうがねぇヤツだな(笑)』
そう言って、あたしの髪をくしゃくしゃってした。
その手が温かくて、余計に泣ける。
そして楽さんは、そっとあたしの顔を覗きこんできた。
『なぁ、ふたば?』
「……うん。」
『オレは何があってもお前を守るから、信じてついてこいよ?』
その言葉にあたしは、ただ黙って頷いた。
嬉しくて、
すごく嬉しくて、
幸せだ。
「楽さん…」
『ん?』
「あたしも、、、楽さんが好き。」
やっとの思いで出た言葉。
そんなあたしの顔を見て、楽さんはふっと笑った。
『知ってるよ。』
「……もぉ、意地悪。」
『でも、オレはそれ以上に好きだけどな。』
ちょっと恥ずかしい言葉も、楽さんなら嫌じゃない。
でも、これはあたしだけの、、、特権だよね。
『……ふたば。』
「……うん。」
『顔、見せて。』
「……ん?」
楽さんの言葉を聞いて、顔をあげた。
するとそこには、楽さんの優しい笑顔があった。
『……好きだよ、ふたば。』
そのまま、あたしの唇に楽さんの唇が重なった。
傘の中で、秘密のキス。
幸せな時間だった。
ーfinー