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SECRET NIGHT【八乙女楽】

第1章 雨の帰り道


しばらく車を走らせると、そこはあの日、みんなでお花見をした公園だった。

駐車場に車が入ると、携帯のバイブ音が聞こえた。
あたしは慌てて鞄の中から携帯を取り出した。

あ、違う。
楽さんの携帯かな。

車を停めると、楽さんは自分の携帯を取り出した。


『わりぃ、ふたば。』

「うん?」

『ちょっと、先に行ってて?』

「うん、わかった。」


携帯を見て、ちょっと眉間にシワを寄せた楽さん。
きっと、お父さん、、、社長からなんだろうな。

あたしは気にしないふりして、車を出た。

そしてあたしは、あの日、楽さんと話したベンチを探した。


「あ、ここだ。」


忘れもしない、この場所。

あの日は二人で並んで座ったけど、今日は雨で座れないな。

ちょっと残念。

それからしばらく、あたしはそのベンチの上の桜を見つめてた。


『……ふたば?』

「あっ、楽さん!」

『ほら。』

「え?」


楽さんはあたしの肩に着ていたジャケットを掛けた。


『ふたばが、風邪引いたら困るからな。』

「それを言うなら、楽さんだよ!」

『オレは大丈夫だって言ったろ?』

「でも…」

『いいから、大人しく言うこと聞いてろ!』

「はぁい。」


ホントにどこまでも紳士的。

俺様な雰囲気だけど、ホントは違うんだよな。


『桜、だいぶ散ってんな。』

「そうだね。」

『…。』

「…。」


なんか、沈黙。

会話が続かない。


「……。」

『……。』


しばらくあたしたちは、傘越しに桜を見てた。

そして、ヒューっと風が吹いて、桜の花びらが散っていった。


「あ、楽さん!ここに花びらが……」


散った桜の花びらが、楽さんの腕にくっついた。

それを取ろうと、あたしが手を伸ばすと…


「あっ!」

『掴まえた。』

「楽さん?」


楽さんはあたしの手を、ギュッと掴んだ。

そして、その手をぐいっと引っ張って、あたしは楽さんの腕の中に引き寄せられた。


「楽さん、ダメだよ…」

『誰もいねぇよ。こんな雨の日に。』

「でも…」


そんなあたしの言葉なんて聞いてない。


『ふたば?』

「…はぃ。」

『オレは、ふたばが好きだ。』

「…はぃ。」

『だから…』


楽さんのあたしを抱き締める腕の力が強くなった。


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