第2章 大人の二人
「ただいま」
帰ってきた!
ご飯をすぐ食べられるように準備していると、待ち侘びていた声が聞こえてくる
玄関へ向かい、出迎えた
カ「おかえり、煌」
「・・・」
反応がない
「飯、出来てる?腹減った」
そう言いながら廊下を進んでいく
もっと何かアクションがあると思ったのに
カ「あ、あぁ。すぐ食べれるぞ」
「んじゃ、着替えてくる」
ネクタイを緩めながら寝室へと行ってしまう
・・・なんだか遠いな
食卓の準備も整う頃、煌が着替えを終えてテーブルに着く
「オムライスか」
カ「あぁ、嫌だったか?」
「いいよ、うまそうだし」
微かにフワッと笑う
あぁ、変わらないな。俺の大好きな彼の表情だ
「いただきます」
カ「いただきます」
煌がスプーンを手に取る
「ハート、デカすぎないか?」
そう、オムライスにはケチャップでデカデカとハートを描いた
カ「フゥン、俺の『ラァヴ』を表現したんだ」
バチン☆と効果音が付きそうなウインクをしながら言う
少しの間があってから
「なら、味わって食わなきゃな」
普通に返してオムライスに口を付ける煌
カ「あの、煌」
「ん?」
カ「イタがったり、やめろって言ったりしないのか?」
聞けば彼は、口の中身を咀嚼して飲み込み、口を開いた
「何を」
カ「俺の言動」
「別に。あんたがいいと思ってやってるなら、俺が止める理由はないけど」
カ「そ、そうか」
受け入れてくれるんだ、と少し嬉しくなる反面、気になることがあった
名前、あんたに戻ってる
やっぱり俺のことなんてもう・・・
「食わないの?」
カ「え、あ・・・食べる」
何となく気まずいまま食事を終える
片付けは煌がしてくれた
そのままリビングでテレビをみるが、会話少なに時間が過ぎる
結局別々にシャワーを浴び、寝るだけになってしまった
どうしよう
色々言いたいし、聞きたい
けど怖い
グルグル、悶々
脳内が出口のない迷路になっている
「あのさ」
不意に煌が口を開く
カ「どう、したんだ」
聞きたくない
別れるなんて言って欲しくない
「・・・ちょっと待ってて」
そう言って煌は寝室へ向かった
言い様のない不安を抱いたまま、彼の背中を見送った