第2章 変わり始める日常
花side
ここは家じゃないんだから
眠っちゃいけない…!
そう思えば思うほどに
寝不足の頭はもやがかかったように
何も考えられなくなって
何だか妙に心地よい村上さんの声を
聞きながらぼんやりと桜を見つめていた
はずなのに
次の瞬間私は
桜並木の下を村上さんと手を繋いで
歩いていて…
時折後ろを振り返って私に向けられる
村上さんの笑顔が
なぜかすごく嬉しくて
繋がれた手から
幸せな感情が溢れだしてくる…
だからなのかな…
私の人生で
今まで一度も口にしたことのない言葉が
つい口からこぼれ落ちそうになる…
これはきっと夢なんだ…
きっと私は今
村上さんとあの青いベンチに座っていて
少し目を閉じている
その少しの間に夢を見ているんだ…
だったら口にしてみても
いいのかもしれない…
だって夢から覚めればきっと
もうこんな感情を抱くことは
無いんだから…
今だ…
村上さんが振り返って
また私を見て笑ってる…
大きく息を吸い込んで
今まで感じたことのないこの気持ちを
口にしてみるんだ…
「村上さんが…好き……」