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世界が目覚める時、

第1章 序章


今、私は紙を片手に、叔母の家を探している。
大まかな位置しか書かれていない地図は、方向音痴な私には読み解くのは難しい。
途中で間違えてしまったのか、気がつけば木々が生い茂る林に入り込んでしまった。
「・・どうしよう。」
困って、私は紙と周囲とを交互に見回した。
完全に迷子だ。どうしよう。
助けを呼ぼうにも、ここがどこだか分からない。
叔母夫婦もいない今、頼れる人はいない。
私はその叔母夫婦の家に来ることで転校することを許されたのに、迷ってしまうなんて。
途方に暮れて、私はぼんやりと空を見上げた。
空は木々に覆われていて、私から陽の光を奪っていた。
暗い林の中は、人の気配がない。私は恐ろしく感じて、地図と周囲とを見回して、なんとか現在位置を探ろうとした。
ふと、自分の足元に違和感を感じ、下を見た。
一匹の白蛇が、私の靴に巻き付いていたのだ。
一瞬ぎょっとしたが、すぐに落ち着きを取り戻した。
こんな山の中だ、蛇くらいいて当然だろう。
そう一人納得した。そして足元でじゃれつく蛇を眺めた。
白い蛇なんて珍しい。
街中にいると、蛇なんて滅多に見るもんじゃないけど、それでも私は何度かこの神秘的な生物を見たことがある。
しかし、その蛇達はどれも褐色や鳶色で、白い蛇はいなかった。
「白蛇は、神の遣いって言うけど、本当かな。」
何気なく呟いて、私は蛇にそっと触れた。
硬質な印象がある鱗は、触ってみると意外に滑らかで驚いた。
白蛇は、不躾に触ってくる私に怒ったようでもなく、愛くるしい顔でその頭をもたげた。
黒いその瞳を見ていると、まるで心の中まで見透かされているかのような感覚に陥る。
しばらく、私はそうして白蛇に癒されていた。
「あ!そうだ!家に行かないと!」
大切な事を忘れていた!私は立ち上がると、慌てて叫んだ。
そして今の今まで一緒にいた蛇に手を振ると、走り出した。
「ごめんね!行かなくちゃ!バイバイ!」
私はそのまま振り返らずに、枯れ葉で埋まった林道を走った。
その後ろ姿を、蛇は見送っているかのように見つめていた。

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