第9章 帰還
「しっかし、よくこんな所まで来たね」
エマはくるっと身をひるがえすと、空を見上げた。
その姿を見て、リヴァイは初めてここが外だと気づく。ここは……いつだったか、ファーラン・イザベルと共に夜空を見た兵団本部の屋上だ。
「壁外ではずーっと外に居るから、皆建物の中に籠ってるよ?」
「……その割に人気が無かったが?」
「んー。まず役付きは帰還してすぐ報告書作成したり、死亡通知書いたりするから執務室に入りびたってる」
そこで、遠くを見つめていたエマがこちらに視線を移した。
「一般兵士は……単純に人数が減ったってのもあるけど。皆声を殺して過ごすからね。姿は見えなくても居るんだよ。だからちょっと……独特な雰囲気だよね」
その言葉にに成程、と納得した。
建物内の空気は淀んでいた。不気味だと感じたのは、あながち間違ってはいなかったのだ。
「にしては随分と盛んな奴らも居るようだな」
「あぁ……そう……」
エマはあからさまに顔を歪めた後、意外な言葉を口にした。
「ねぇリヴァイ、その人達って……良さそうだった?」