第9章 帰還
「てめぇ、なにすん……」
「さっきから何なのよ!人の話も聞かないで!!」
エマは睨みを利かせ、更に捲し立てる。
「黙って聞いてりゃ、ヤルだの抱くだの……色気が無くて悪かったわね!でも、私だってあんたなんか願い下げよ!自惚れんなバカ!!」
耳をつんざくような罵声に、リヴァイは奥歯を噛み締める。
「ここには誰も来ない。だから……少し話をしよう?」
エマは真っ直ぐにこちらを見てくる。自分に向けられた視線に耐えきれず、リヴァイは思わず目を逸らした。
すると彼女は首元から手を離し、乱れたシャツに再び手を掛けた。
「これ、痛い?」
そっと、エマの指が首筋を撫でる。
そこあるのは、壁外で彼女自身が付けた傷だ。
「……なんともない」
そう答えると、彼女は力なく笑った。
「謝らないよ?」と冗談っぽく言ってくるものだから、「分かっている」と返事をした。乱れた襟元を直したエマの手が、ゆっくりと離される。