第11章 実態
「リヴァイ、あれから1カ月が経つが……兵団はどうだい?」
大規模な合同訓練が終わったある日、エルヴィンの執務室で問われた。俺の隣に立つエマも興味深気に、こちらの様子を伺っている。
「お前らが兵士達から尊敬されていて、実は恋仲である事は分かった」
そう言えば、エルヴィンとエマは驚いたように顔を見合せ……そしてゲラゲラと笑った。
「そうなんだリヴァイ。俺は色恋で側近を決める、どうしようもない男らしい」
「そうそう!私は身体を使って上官に媚びる、いやらしい女なの。エルヴィンだけじゃないよ?幹部とは全員寝たから。悪い女だよ全く」
「俺の上官はクソだな。まぁ、結構な事じゃねぇか」
「確かに結構な事だな」とエルヴィンが穏やかに呟いた。噂の欠片も気にしていないのが分かる。しかし……
「リヴァイ、他には何か聞いた?」
エマは笑ってはいるが、その表情にはどこか影があるように見えた。
「……班員だけでなく、特に若い兵士からお前は尊敬されているらしい。美人で強くて優しいお姉さんなんだとよ」
「それだけ?」
「あぁ、それだけだ」
そう言えば彼女はやたらと上機嫌で。
エルヴィンに『美人で強くて優しいお姉さん』をアピールしている。
「では。美人で強くて優しいお姉さん。そしてクソみたいな上官をもった哀れな部下に、休暇を与えよう。遅くなってすまなかったね」
「おぉー!リヴァイやったね!どこ行きたい?」
「……決まってんじゃねぇのか」
「哀れな部下の意見も、一応聞いておこうと思って」
「そうかよ」
こうして、彼女の待ちに待った休暇が決まった。
11章 END