第9章 帰還
カタカタと窓が音を立てる
……外は風が強いのだろうか
壁外調査から帰還した夜、リヴァイは自身のベッドへ突っ伏しそんな事を考えていた。
普段ならば相部屋の連中がやかましく騒ぎ立てている頃だが、今日ばかりはいつものそれが嘘のように静かだ。
今、この部屋に居るのはリヴァイの他に3人。誰も言葉を交わそうとはせず、その身を毛布で隠している。
……喉が渇いた
そんな気分にはなれず、夕食は取らなかった。最後に何かを口にしたのはいつだったか……
ギィィィィ……
上半身を起こせば、木製のベッドが大げさな音をたててしなる。
部屋に反響した音がやけに虚しい。
立ち並ぶ2段ベッドの脇を通り、リヴァイは喉を潤す為部屋を後にした。
薄暗い廊下に出てまず思うのは、人の姿が全く見えない。という事。少し動けば自身の足音、そして床が軋む音が長い廊下の先へと吸い込まれてゆく。
不気味
単純に、そう感じた。
足を動かせば床に溜まったチリが舞い上がり、月明かりに照らされキラキラと光る。普段ならば目の色を変えて掃除をする所だが、何故か今だけは悪くない。そう思う。
やがて階段へ差し掛かかると、じっとその先を見下ろした。
ここに窓はない。
月明かりすらも届かないそこは暗黒に染まっている。