第8章 現実
その言葉に、リヴァイの瞳に光が宿る。彼はゆっくりと立ち上がると、やがてはっきりとした口調で返事を返した。
「分かった……俺が持っていない何かを、お前は持っているようだ。そいつが何か分かるまで、付き合ってやる」
未だ衰えぬ豪雨に打たれながら。
それでも、その言葉ははっきりと聞こえた。
「エマ、リヴァイも同行させて貰うよ」
「了解しました」
「班長!生存者なし、馬2頭確保できました」
「ありがとう、すぐに出発できそう?」
「はい、問題ありません」
エルヴィンに目配せすれば、彼は赤黒く染まった泥の上を歩き出した。その一歩後ろにリヴァイも続く。
エマも2人の背を追ったがその最中、1つの遺体を見つけた。身体の半分を失った彼の瞳は大きく見開かれたままだ。
足早に駆け寄れば、ジャバジャバと泥が跳ねあがる。
エマは遺体の横に立つと、彼の瞼にそっと指をかけ呟いた。
「……フラゴン分隊長。ありがとうございました」
第8章 END