第8章 現実
「リヴァイ、お前は確かに強い。だがそれだけでは戦いに勝てない。昨日巨人を倒した時のように、なぜ3人で連携して私を襲わなかった?そうすれば、こんな無様な事にはならなかったはずだ」
その言葉に、彼は何を思っただろう。
ただただ雨音が煩い。しかし、確かに静寂が辺りを包んでいた。
やがてリヴァイは、悲痛な面持のままそっと目を閉じた。
「……お前の言う通りだ」
彼はエルヴィンへ突き付けていた刃を力なく下ろすと、兵士達の地で赤く染まった泥へ崩れ落ちた。
「俺の驕りが……俺のクソみてぇなプライドが、あいつらを殺したんだ」
エマもまた、リヴァイへ向けていた刃をしまうと、エルヴィンと共に彼をじっと見つめていた。
その小さな背中には悲しみと、後悔の念が渦巻いているように見える。
「エマ、馬を集めてくれないか?」
「班員に探してもらっています」
「そうか、相変わらず仕事が早いな」
エルヴィンが立ち上がり、いつも通りに声を掛けてきた。そして、その視線がリヴァイに向けられる。
「早く荷馬車隊を見つけて、荷物の中にある悪天候用の音響弾を打ち上げねばならない。リヴァイ、お前も一緒に来い」
その言葉に驚き、顔を上げるリヴァイ。
「俺は、お前を殺そうとしたんだぞ……?」
「最初に私は言ったはずだ『罪には問わない』と。それにこんな状況になった以上、次回の壁外調査をロヴォフに認めさせるためにも、お前の協力は必要だ」
「これだけボロボロになっても、まだ抗うつもりなのか?」
「当然だ。それが生き残った者の義務だからな。さあ、私と一緒に来るのか、それともここから逃げ帰るか……自分で決めろ」