第8章 現実
その後「もう疲れた」と話を強制的に切ったリヴァイを見て、周囲の視線が1つ1つ外れてゆく。瞬く間にホールは騒がしくなり、兵士達は束の間の休息を思い思いに過ごしてゆく。
「リヴァイと仲良くなれなかったよぉぉ」
ハンジが心底残念そうに帰ってきた。予定よりも早い帰還に、エマは笑顔で彼女を迎え入れた。
「お帰り、十分仲良さそうに喋ってたよ」
「えー、そうかなぁ?でもね、この調査が終わったらご飯行く約束をしたんだ!」
「凄いじゃん!その時は私も一緒に行っていい?」
「勿論だよー!お互い生きて帰れたらね」
冗談っぽく笑って話すが、これが全く冗談でない。
死傷者及び負傷者が0名の壁外調査なんて存在しない。明日も、明後日も誰かが命を落とす。それが帰還まで続けられるのだ。
「君も帰ったら一緒にどう?」なんて周りに絡みまくるハンジと、凄く嫌そうな班員を見てエマはゲラゲラと笑った。もうしばらくすると、モブリットが彼女を迎えにくるのだろう。それがいつものパターンだ。
調査兵団とは地獄のような場所。
しかしエマはこの場所が、この仲間が大好きだ。
自分を認め、存在価値を与えてくれる。調査兵団という組織は守りたい。大切な場所なのだ。